院長ブログ

HOME 院長ブログ -かみ合わせorganic diary-第1回「歯の長持ち、あごの健康維持を真剣に考えた男たちの物語」

-かみ合わせorganic diary-第1回「歯の長持ち、あごの健康維持を真剣に考えた男たちの物語」

当院で実践している歯の長持ち、あごの健康維持を予知性を持って実現するルール、オーガニックオクルージョンのルーツを辿る。

皆様、ご機嫌いかがですか? 福永 矯正歯科・歯科口腔外科 院長 福永秀一です。 ここでは、身体にやさしいオーガニック好きの私が、お気に入りのカフェである埼玉県日高市のオーガニックレストラン阿里山カフェを紹介しながら、カフェの暖かい日差しの中で、ゆっくりと、午後のひと時を、かみ合わせにまつわるおしゃべりをする企画です。 日高市の阿里山カフェは、創業35年位になりますが、私は大学が近かった関係で、 ほぼ創業当時から通い続けているこのカフェを愛する一人です。 さて、かみ合わせorganic diaryの第1回は、当院で実践している歯の長持ち、あごの健康維持を予知性を持って実現するルール、 オーガニックオクルージョンのルーツです。「題して、歯の長持ち、あごの健康維持を真剣に考えた男たちの物語です。」

my favorite cafe : 阿里山カフェ(埼玉県日高市)

私が本日、my favorite caféである阿里山カフェで注文したのは、お豆と季節の野菜カレー、そして、デザートに、にんじんケーキ、ドリンクは、大好きな阿里山高山茶です。カレーは野菜たっぷりで、ヘルシー志向の私にはありがたいです。カレーはこくのある大人の味、お米は玄米で、ものすごーく身体に優しいカレーです。
にんじんケーキ、これには、黒糖味のビーガンアイスクリームが添えられていて、これも楽しみの1つです。ケーキは、自然の甘さを活かしています。一方、ドリンクの阿里山高山茶は、霧の深い山間部で栽培された高級烏龍茶です。
阿里山高山茶を注ぎます。見てください、この美しい黄金色。いただきます。




かみあわせの治療学(ナソロジー)、オーガニック・オクルージョンのルーツは、1920年代のアメリカ。

さて、当院で実践しているオーガニック・オクルージョンのルーツは、1920年代のアメリカにさかのぼります。
今年は、2025年でもう1世紀も前になります。ちなみに、ディズニー・シーのウエスタンリバー鉄道のモチーフは、
19世紀らしいのでもっと古いですね。私は、あの男性の方のナレーションが大好きです。ワクワクしますよね。
皆様は、いかがですか?
さて、オーガニック・オクルージョンのルールは、アメリカの歯科医師、マッカラム先生(上段)とスタラード先生(下段)により、かみ合わせの治療学、ナソロジーという考えから始まりました。
マッカラム先生は, その当時のアメリカの歯科医療が、美しく詰められた、詰め物や、美しくかぶせられた被せ物を意味しており、いわゆる見た目重視の誤った考えを植え付けていると語ったそうです。また、かみ合わせの重要性にあまり関心が払われていないと述べたそうです。私が思う、今の歯科医療も1世紀前に逆戻りしてしまったかのようです。歯の長持ち、あごの健康維持を実現できるかみ合わせの治療学、ナソロジーは遠いかなたに忘れ去られています。
マッカラム先生は、見た目より機能回復の重要性を強調しました。個々の歯をきれいに治療することも大切だけれど,歯の長持ち、あごの健康維持を管理することが歯科医師のもっとも重要な役割であり、それは他ならぬ、理想的なかみ合わせを作ることであると述べたそうです。このことは、私の治療のテーマでもあるかみ合わせの機能。機能とは、すなわち、歯の長持ち、あごの健康維持を実現するかみ合わせです。

マッカラム先生は、関節にかみ合わせの出発点があることを提唱(1921年)。

また、マッカラム先生は、家のドアに軸があるように、左右のあごの関節にも、それらを結ぶ仮想の軸があると考えた人です。
この軸は、あごの関節の回転中心であり、関節がかみ合わせのスタートポジションであるということを意味しています。
この回転中心を、基準にかみ合わせを作りなさいというのが、マッカラム先生の考えです。

マッカラム先生が、始めたナソロジーというかみあわせの学問は一貫して、このあごの関節の軸、回転中心をもっとも重要な位置としています。なぜなら、この関節の軸は、身体の健康にも重要な軸で、姿勢や肩こり、頭痛、首が回らないなど原因にも関わってきます。この軸がズレたり、揺さぶられたりするのは、この関節の回転中心で、閉じるとぶつかる奥歯がある時です。左右均等に噛めない、左の歯がぶつかって気になるなどは、関節の軸の閉鎖経路上にぶつかる奥歯があることを示しています。
また、歯ぎしりするとぶつかる奥歯がある場合も、この関節は、ズレたり、揺さぶられます。このように、このぶつかる奥歯は、前歯とあごの関節の中間でシーソーの支点、てこの支点になり、関節の軸、回転中心をズラして揺さぶります。

ドアや下あごのように回転して閉じる物には軸があります。ドアの軸は、ドア枠にクギが落ちている状態で無理やり閉じていると、軸を揺さぶり、その軸が次第に壊れていきます。関節の軸もその回転中心でぶつかる奥歯があると、顎関節症になり、口が開かない、開く時痛い、音が鳴るなどの症状が起こってきます。一方、ドア枠の落ちているクギは、無理矢理ドアを閉じていると、次第に潰れていきますが、クギに相当するわずかにぶつかる奥歯には、虫歯がないのにしみる痛む、歯ブラシを頑張っているのに歯周病が進行する、歯が突然割れるなどの症状が起こってきます。
・関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がある例(口の中の所見)

・関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がある例(三種の神器を使用した咬合機能検査所見)ぶつかる奥歯が、シーソーの支点(てこの支点)となってあごの関節の軸、回転中心を揺さぶる(シーソー現象、てこ現象の恐怖)

関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がなければ、顎関節症も治る。

このような理由で、あごの関節の軸、回転中心でかみ合わせを作ることの重要性をナソロジーで学んだ先人達は,その当時、歯やあごに自覚症状のあるなしに拘わらず, すべての歯科治療に、関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がなく、関節がズレたりすることがないようにかみ合わせを作ることを究極の目的としていました。
ナソロジーの創始者の1人であるスチュアート先生の奥様も、関節の軸でかみ合わせを作るため歯を削ったり被せに置き換えて治療を受けたそうです。そして、スチュアート先生の理想を実現した作品として、スチュアート先生の講演に参加されていたそうです。関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がないというルールは、当院のオーガニック・オクルージョンのルールの1つであり、当院もこの考えに賛成です。なぜなら、このようなかみ合わせを作ることで、これまで、多くの顎関節症の患者様を、原因であるかみ合わせから治療し成果を挙げてきたからです。上段(関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がある。当院矯正歯科治療前)下段(関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がない。当院矯正歯科治療後)当院の顎関節症のケースをご覧になりたい方は、こちら。

「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯ない」かみ合わせは、顎関節症のかみ合わせ治療、矯正歯科治療では重要。

しかし、一方、私の個人的な見解では、少数の虫歯の治療にまでもこの考えを適用するのは、歯に負担がある様にも思います。そのため、私がOrganic Occlusionオーガニック・オクルージョンの重要なルールである、あごの関節の軸でかみ合わせを積極的に作った方が良いと考えられるケースは、顎関節症で長くお悩みの方の治療や、矯正歯科治療のように全ての歯を移動してかみ合わせをリセットできる治療です。顎関節症は、かみ合わせが原因ですので、このルールに従うことにより治療が可能で、また治療により歯の長持ちにも予知性をもって貢献できるので一石二鳥といえます。また、矯正歯科治療においては、このルールを無理なく応用することができますので、口元の美しさと共に歯の長持ち、あごの健康維持にも予知性をもって貢献でき、こちらも一石二鳥といえます

スタラード先生は、「歯ぎしりすると奥歯がぶつからない」かみ合わせが、歯が壊れないかみ合わせであることを発見。PKトーマス先生は、奥歯には凹凸があり、ルールに従ってしっかり噛み合うことが必要であると発表。

さて、ナソロジーの創始者の1人であるスタラード先生は、「歯ぎしりした時、奥歯がぶつからない」というかみ合わせが、歯が壊れないかみ合わせであること発見し、オーガニック・オクルージョンという言葉も、スタラード先生によって最初に始まったといわれています。上段(「歯ぎしりした時、奥歯がぶつかる」歯が壊れるかみ合わせ、当院矯正歯科治療前)。下段(「歯ぎしりした時、奥歯がぶつからない」歯が壊れないかみ合わせ、当院矯正歯科治療後)


さらに、1949年 PKトーマス先生は,奥歯には凹凸があり、ルールに従ってしっかり噛み合うことが必要であると発表しました。これらの先生の提唱した2つのルールも、当院のコンセプトであるオーガニック・オクルージョンのルールです。このように理想的なかみ合わせの考えは、その治療成績が優れている半面、術式の難易度が高く、時間がかかるといわれていました。
上段:(奥歯がルールに従ってしっかり噛み合っていない、当院矯正歯科治療前)。下段(奥歯がルールに従ってしっかり噛み合っている、当院矯正歯科治療後)。

1970年代以降のナソロジー。

その後、1970年代以降から現在、ナソロジーがどうなってしまったかというと、若いナソロジー先生達は、関節の軸、回転中心でかみ合わせを作るという、歯の長持ち、あごの健康維持を果たすナソロジーのやり方が、複雑で、時間がかかり現実的ではないと考えたそうです。そのため、関節の軸、回転中心で閉じると奥歯がぶつかるという現象、患者様が、左右の奥歯が均等に噛めないという現象の原因ですが、若いナソロジーの先生達は、成人の90%の人は、もともと左右の奥歯が均等に噛めていないという論文を発表し、左右の奥歯が均等に噛めない現象には、目をつぶって、歯やあごに症状が出てから考えようという方針に変わったそうです。時間のかかる、歯の長持ち、あごの健康維持に関わる歯科の本質、核心となる作業を止めてしまったそうです。日本もまったく同じですね。 今現在行われている歯科治療は、関節の軸、回転中心にかみ合わせを作ることは、ほとんど行われていません。すべての歯を移動し、かみあわせをリセットできる矯正歯科治療でさえ、時間がかかるため歯の長持ち、あごの健康維持につながるかみ合わせを予知性を持って作っていません。ナソロジーは、歯科医師が、見ためにもわからない悪いかみ合わせによる暴力的な力をコントロールする歯やあごを守る治療学そして予防学ですが、現在、それは過去の遺物になってしまっています。

ナソロジーの実現、身体に重要な軸である関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がないという最小単位の悪いかみ合わせの改善の実現には、かみ合わせの調整の知識、技術が必須。

ナソロジーの実現、身体の健康に重要な軸である関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がないという最小単位の悪いかみ合わせの改善の実現には、かみ合わせの調整というミクロン単位で、歯のエナメル質をピンポイントに削って調整する特別な技術が必要です。しかし、現在の歯科医にそれを実践する知識や技術はないかもしれません。また、それを必要とする状況すらこの世の中には存在していないと社会は語っています。ファストビジネスの流行する現代、フードもファッションも美容も、早い、安い、簡単がモテ流行られています。歯科においても、1世紀前に、マッカラム先生が感じた、歯の長持ち、あごの健康維持とは無縁の、見た目重視の治療に舞い戻ってしまっています。

私とナソロジーの接点。(1)フロイデインターナショナルアカデミー。

私自身のかみ合わせの学問、ナソロジーとの接点は、私は、2014年にヨーロッパ、オーストリアから発祥したオーストリアンナソロジー開祖、スラビチェック先生(写真)の主催する約1週間のサマースクールに初めて参加しました。また、日本人でそのスラビチェック先生の右腕として活躍されていた、現在、日本橋でご開業されている田島歯科医院の院長田島健先生からフロイデインターナショナルアカデミーで矯正歯科治療を学びました。サマースクール終了後、田島先生のご家族とウィーンを離れモント湖畔周辺へ旅行する前に、田島先生のご厚意でスラビチェック先生のご自宅にお邪魔することができました。その後、再度、2016年のサマースクールにも田島先生ご家族と参加し、スクール終了後には、また、ザルツブルグへの旅をご一緒させて頂くことができました。その後、残念ながらスラビチェック先生は、2022年に94歳でご逝去されました。しかし、田島先生は、日本で、これからもスビチェック先生のコンセプトをもとにセミナーを開催されていかれると思います。オーストリアンナソロジーにご興味のある歯科医師の先生は、受講を検討してみては、いかがでしょうか?





私とナソロジーの接点。(2)IPSG包括医療研究会。

また、私は、2010年頃より、IPSG包括歯科医療研究会というstudy groupで勉強を続けています。2013年には、ドイツに約10日間ほどの研修旅行に行きました。Study groupの顧問である稲葉繁先生は、ナソロジーという噛み合わせの学問を日本に沢山紹介した功績を持つ保母須弥也先生とほぼ同じ時代を生きてきた先生です。ナソロジーの創始者のである、スチュアート先生やPKトーマス先生を始め、歯科医であれば誰でも一度は名前を聞いたことがある歴史的に著名な錚々たる海外の歯科医より直接、知識や技術を学んだ先生です。現在、80歳を過ぎてもなお新規の患者様を、次々と私達、会員の目の前で治療して見せて下さいます。私も研究会のVIP会員として10年以上に渡り、先生の臨床を目の前で見学し自分の臨床に生かしてきました。先日、稲葉先生より免許皆伝の貴重なお言葉を頂戴しすごくうれしかったです。なぜなら、稲葉先生は、なにげなくおっしゃった一言かもしれませんが、私にとって稲葉先生は、人格者であり、「歯の長持ち、あごの健康維持」の学問、ナソロジーの歴史を知るまさに生き字引、レジェンドだからです。かみ合わせ、ナソロジーは、まさにそれが歯科学の基本、出発点です。春よりOBとなり後進の先生に立場をお譲りすることになりました。稲葉先生の指導者としての信条は、山本五十六の格言「やってみせ、言って聞かせ、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」です。歯の長持ち、あごの健康維持につながるかみ合わせの学問、ナソロジーを真剣に学びたい歯科医師の先生は、IPSG咬合認定医コースを受講を検討してみてはいかがでしょうか?
皆様、良い時間をお過ごし下さい。







よろしければ、youtube版も、楽しいので、是非ご覧ください。