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奥歯の詰め物、被せ物、違和感の原因は? 目に見えない奥歯の悪い噛み合わせの落とし穴。

歯科治療に30年以上携わってきた、さいたま市の歯科医師が明かす、日本人が歯を失い、インプラントと良質の入れ歯を求め彷徨い続けている理由。

「奥歯に詰め物、被せ物をしたけど、なんだか違和感が・・・」、そんな経験はありませんか?見た目にはわからない、わずかにぶつかる奥歯が、徐々に歯とあごの不調を引き起こすことがあります。

見過ごされがちな「噛み合わせ」の重要性。

皆様のお口の中は、非常に敏感なセンサーです。髪の毛50μの侵入も見逃しません。そのため、髪の毛よりも、硬い材質の歯科材料(金属、プラスチック、ジルコニアなど)のわずかにぶつかる存在を許容できません。そのため、この歯とあごにトラブルを引き起こすわずかな邪魔者を、ミクロン単位の繊細な歯を削る調整技術で解決できることは、「噛み合わせ」に熟知した歯科医師の仕事といえます。このような、わずかにぶつかる詰め物、被せ物、はたまた、元々の悪い噛み合わせは、噛み合わせの力がその奥歯に対し暴力的に働くことによって、歯やあごの違和感から始まり、最後は歯磨きがどんなに上手でも噛み合わせの暴力的な力で歯周病が進行、歯の破折を招いて、歯の喪失や顎関節症に繋がります。噛み合わせを調整する技術は、1〜2本のぶつかる詰め物、被せ物の調整から、皆様の健康な歯だけで構成されている悪い噛み合わせの調整まで、歯科のあらゆる場面で、このミクロン単位の正確な技術が必要になります。しかし、この技術を、正確に予知性を持って安全に行うことができる歯科医師はわずかです。必ず精密な検査、模型分析による評価を必要とします。この噛み合わせ検査に必要不可欠な物は、当院で三種の神器と呼ぶ①フェイスボー、②関節の軸で噛み合わせを記録したワックス、③咬合器です。しかし、保健治療はともかく、ほとんどの歯科治療は、最新式のレントゲンCT検査を実施しますが、治療を行う際に、三種の神器を使用した噛み合わせの検査、評価はほとんど行われることはありません。なぜなら、皆様の噛み合わせの感覚に頼っているからです。皆様は、詰め物、被せ物、インプラント、矯正治療で、最終的な噛む位置を決定する際、「はい、カチカチ、噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね。」と質問されたことはないでしょうか?なにげない、この質問は、「関節の軸で噛み合わせを作らない場合」の皆様の感覚に頼った「お守り」のようなもです。下写真は、フェイスボーと咬合器を示します。

噛み合わせの基本:「関節の軸」を意識する重要性。

理想的な噛み合わせとは、あごの関節が安定し、全ての歯が均等に接触する状態です。その基準となるのが、「下あごの関節の軸」です。関節の軸とは、ドアで言う開閉の軸です。ドアが正確にドア枠に収まるためには、この軸が揺さぶられてルーズに動くようではダメです。動かず回転だけして初めて、整然とドアはドア枠に、下あごの歯は上あごの歯の決まった位置に閉鎖することができます。そのため、あごの関節は、回転して閉じる噛み合わせのスタートポジションといえます。軸がイカれたままのドアは、軸もドア、ドア枠も、それぞれが傷つき、ボロボロになっていくのが想像できると思います。下あごの関節の軸は、もともと特殊な性質があり、アイーンと前にも、左右にも動くことができて、いわゆるあそびがあります。このあそびは生体特有ならではとも考えられますが、わずかに高くぶつかる被せ物があっても、すべての歯で噛むことができるようにしてしまいます。この時、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯」である被せ物は、本来、回転だけして、ズレたり揺さぶられたりしない関節を、ズラして揺さぶります。ドア枠に小さなクギが落ちているのと同じ状態です。クギが落ちているのに、それを無視してしっかりドアを閉じようとすると、ドアの軸に歪が生じます。そのため、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」を放置することは、ドア枠に落ちている小さなクギを放置することと一緒です。小さなクギは、軸を歪め壊し、やがてドアやドア枠も破壊していきます。人では、わずかに高くぶつかる奥歯が、あごの関節に炎症を引き起こし顎関節症(口が開かない、開く時痛い、音が鳴る)となります。


そして、小さなクギは、ドアを閉める度に変形していきますが、わずかに高くぶつかる奥歯には、歯の違和感から始まり、虫歯がないのにしみる痛む、歯ブラシを頑張っているのに歯周病が進行する、歯が突然ある日破折するということが起こります。全身的なレベルでは:「関節の軸」は、人の身体の健康(体幹)に重要な軸で、その軸がずれて、揺さぶられることは、姿勢、頭痛、首の痛み、肩凝り、首が回らない、腰痛などに影響します。ドアは、平坦な面同士で閉じますが、噛み合わせは、下あごの奥歯の凹凸と上あごの奥歯の凹凸が、寸分違わずに噛み合う必要があるため、まさに神合わせの奇跡ともいえます。この奇跡を起こすためには、三種の神器を使用した「関節の軸と噛み合わせの調和」を見ることが不可欠で、それによる模型分析が非常に重要になります。神合わせの奇跡を起こすためには、治療を通して精密な検査と分析、ミクロン単位で精密に歯をピンポイントで削る噛み合わせの調整が不可欠です。めちゃくちゃ時間のかかる作業になります。しかし、こだわりを持って実践することで、ほとんどの人が起こせない奇跡:長く顎関節症に患っていた方が、原因である噛み合わせから治る(長い間使用していた対症療法であるマウスピースや、顎関節症の症状と付き合う必要が無くなります)、嚙み合わせで歯の予防を予知性を持って行う事できます。(歯磨きがこれだけ普及した現在でも、歯を失って40歳前後に総入れ歯になっている方が、依然としていらっしゃることは、歯磨き=歯の長持ちではないことをご理解頂けるのではないでしょうか?)

詰め物、被せ物装着時の落とし穴:2つの噛み合わせ「関節の位置」と「習慣的な位置」

一般的な歯科医院では、詰め物や被せ物の装着に際し、皆様の感覚に頼った調整が行われることが多いです。
それは、皆様が、歯科医院で、一度は聞いたことのある、「はい、カチカチ噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね。」です。以上は、前述しました。
この方法は、詰め物や被せ物の最終的な噛む位置の決定を、皆様の習慣的に噛む位置で、皆様の感覚に頼っていることを意味しています。もちろん、「関節の軸」で嚙み合わせを作っても、患者様の違和感がないかどうかの確認は必要です。
50ミクロンの髪の毛さえも見逃さない、敏感な口の中に適応する被せを装着する場合、多くは習慣的な噛む位置で患者様の感覚に頼り切ってしまいますが、「関節の軸」を意識し、下あごリラックスさせ関節の軸に誘導して噛ませ、関節の軸、回転中心の閉鎖経路を邪魔する部分の調整をピンポイントに行う必要があります。これがなされない場合、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」という目に見えない「最小単位」の悪い奥歯の噛み合わせが残ります。この「関節の軸」の閉鎖経路上のぶつかる奥歯を、患者様の習慣的な噛む位置で帳尻を合わせようと調整し続けた結果、詰め物や被せ物を削り過ぎてしまい、噛んだ時に、噛むところが失くなっていて、噛み合わせが低くなってしまうということがあります。詰め物や被せ物を装着する際に、患者様の習慣的な噛み合わせの位置と、「関節の軸」でのかみ合わせの位置を理解して詰め物や被せ物を調整することは重要です。人の10人に9人は、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」といわれており、「関節の位置」でぶつかる奥歯を避けるため「習慣的な位置」で噛んでいます。そのため、①「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」この「最小単位」の目に見えない奥歯の悪い噛み合わせを持つ人は、2つの噛む位置を持っていることになります。もちろん、これらが、ほぼ一致し、②「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がない」噛む位置が1つしかない人もいます。①では、噛む位置が2箇所ある、どこでも噛めてしまうというような噛み合わせの安定しない不安を抱える人もいます。この2つの噛む位置を持っている人は、一般的に下あごが緊張しています。これは、「関節の軸」で自然に噛めないことが原因です。一方、②の「関節の軸の位置」で噛める人は、下あごはリラックスしており、自然に、快適に噛めます。下写真は、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯ある」患者様の2つの噛む位置です。上段は「関節の位置」、下段は「習慣的な位置」です。上段から下段へ嚙み合わせがズレて、その際、関節もズレています。

詰め物、被せ物の違和感のメカニズム:歯医者から家に帰ると噛み合わせは変わる?

「歯科医院では、大丈夫だと思ったのに、家に帰ると違和感が・・・」。これは、「関節の軸」を調整しないことによって起こりがちな現象です。しかし、ほとんどの歯科治療では、1〜2本の奥歯の詰め物、被せ物を装着する際、「関節の軸」を考慮することはなく、「はい、カチカチ噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね。」と問答が続き、最終的に患者様の習慣的な感覚に頼った位置に最終的な噛み合わせが決定しています。しかし、人の10人に9人は、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」といわれており、見た目でもわからない「最小単位」の奥歯の悪い噛み合わせが皆様の日常に潜んでいる可能性は普通にあり、将来的に、歯の喪失や顎関節症に発展する可能性があります。あるいは、もう皆様は、そのような症状にお気付きになっているかもしれません。さて、このように最終的に皆様の習慣的な感覚だけを頼りに噛む位置が決定され、詰め物や被せ物が装着された場合でも、「関節の軸」で噛むことができる瞬間が日常には多くあります。それは、唾を飲み込んだり、寝転んだりして姿勢が変わり、下あごに反射が生じて「関節の軸」で閉じることができる瞬間です。「関節の軸」は、このように生体の本来の軸であるため反射により、本来の軸の位置に戻るのです。この時、関節の回転軸、回転中心の閉鎖経路上で奥歯の詰め物、被せ物の調整が不十分だった場合、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」が表面化することがあります。歯科医院では、緊張して訳が分からなかったが、家に帰ってみて改めてリラックスすると、やはり「関節の軸で閉じると、奥歯がぶつかる」ということがあるのです。

「関節の軸」を意識しない矯正歯科治療によって起こってくること。顎関節症との関連性。

「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」状態は、矯正の仕上がり(矯正治療後の違和感や顎関節症)に影響します。
矯正歯科治療では、全ての歯を移動し、噛み合わせを完全にリセットできる治療法なのです。そのため、治療全体を通して、「関節の軸」を考慮し、三種の神器を使用した検査の実施を行うことで、将来的な歯やあごのトラブルを回避することが可能なのです。また、長く顎関節症でお悩みの方も、「関節と調和した噛み合わせを作る」ことで、原因である噛み合わせから治療が可能です。矯正歯科歯科治療で、顎関節症を治療する場合も、噛み合わせそのものから治療することができますので、矯正治療と顎関節の治療を併用する必要はありません。長く顎関節症でお悩みだった患者様は、対症療法であるマウスピースの使用や、お顔の筋肉のマッサージ、あごの開口訓練、常に上下を歯がぶつからないように真剣に取り組んだり、ボトックス注射、整体に通う、整形外科で注射をしてもらう、リハビリするなどが必要なくなります。このために「関節の軸」を考慮した三種の神器を用いた検査、それから得られる模型分析による評価、「関節の軸」に噛み合わせを作るための噛み合わせの調整(患者様の健康な歯のエナメル質を数ミリからミクロン単位でピンポイントに削る調整技術)が必要になります。めちゃくちゃ時間もかかりますが、精密な噛み合わせを作ることで、「歯の予防」にもなります。先日、私が参加する勉強会で、同僚の先生がお持ちなった患者様のケースに、興味深いケースがありました。60歳の顎関節症の患者様は、40歳から顎関節症に悩んでいました。TCH(tooth contact habit: 歯牙接触癖)があると診断されて、20年間、常に上下の歯がぶつからないように真剣に取り組んでいたそうです。その結果、その患者様は、本来舌先は、上あごの天井のところに(通常スポットと呼んでいます)位置付けるのですが、その患者様は、歯をぶつけないように気を付けるあまり、常に舌先を突き出して前歯の間に位置させていたため、開咬という前歯が噛まない噛み合わせになってしまったのです。20年前に噛み合わせの治療を、きちっと受けることができれば、快適な食生活を送ることができたはずです。

 

最後に

ここまで、熟読ありがとうございます。皆様は、噛み合わせに高い関心をお持ちの方だと推察いたします。「たかが噛み合わせ」と軽視することはないと思います。少しでも違和感があれば、噛み合わせに力をいれた当クリニックにご相談下さい。精密検査と高度な技術で、患者様の「噛み合わせ」を根本から改善し、健康で快適な生活をサポートできると思います。嚙み合わせによる歯の予防は、歯磨きによる予防より確実に価値があります(患者様が、30歳以降で、歯磨きがある程度できる方なら)。しかし、噛み合わせで、歯の予防を予知性を持って行える歯科医師は、ほんの一握りです。当院は、カウンセリングの段階から、違いをお見せすることができると思います!

記事の執筆者:福永 矯正歯科・歯科口腔外科 院長:福永秀一

経歴
1991年 明海大学歯学部卒業
1995年 明海大学歯学部大学院歯学研究科修了:歯学博士の学位取得
1998年 日本歯科麻酔学会認定医取得
1999年 日本口腔外科学会専門医取得
明海大学歯学部口腔外科学第一講座助手
2000年 明海大学歯学部口腔外科学第一講座講師
2002年 羽生総合病院口腔外科部長
2012年 IPSG包括歯科医療研究会VIP会員
2024年 福永 矯正歯科・歯科口腔外科 開設