奥歯の詰め物、被せ物、違和感の原因は? 目に見えない奥歯の悪い噛み合わせの落とし穴。
歯科治療に30年以上携わってきた、埼玉県の歯科医師が明かす、日本人が歯を失い、インプラントと良質の入れ歯を求め彷徨い続けている理由。
目次
見過ごされがちな「噛み合わせ検査」の重要性。
皆様のお口の粘膜は、非常に敏感なセンサーです。髪の毛50μの侵入も見逃しません。そのため、髪の毛よりも、硬い歯科材料(金属、せともの、ジルコニア)のわずかにぶつかる存在に気付く場合があります。そして、このわずかにぶつかる邪魔者が、歯とあごの将来にトラブルを引き起こす可能性があるのです。皆様は、保険医療機関や矯正歯科専門医療機関が、噛み合わせ検査を行っていないことをご存じだったでしょうか?「えっ、そんなの嘘でしょ」と思うかもしれません。「噛み合わせは、診てもらっていると思っていたけど・・・」と思うかもしれません。しかし、その証拠に、皆様は、歯科治療終了後に「良い噛み合わせ」になった証明を、これまで一度も見たことが無いのです!それもそのはず、保険医療機関、矯正歯科専門医療機関の「理想の噛み合わせ」は、皆様が思っているのと同じレベル「単に、違和感を感じないこと」なのです!皆様は、治療で噛み合わせを確認する際「はい、カチカチ、噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね。」と質問されたと思います?なにげない、このやり方が、皆様の歯とあごの将来を不透明なものにしているのです。そこに「検査による根拠」は何も無く、ルールに従った誰にとっても良い噛み合わせが作られた訳でもなく、皆様の個人的な直感が許可しただけの噛み合わせなのです。皆様は、違和感の無い噛み合わせにしてもらおうと、治療中の緊張の中、歯科医師の指示通り必至になって自分なりに噛む事を繰り返し、自分の直感を信じて「高いor丁度良い」などを伝えます。しかし、家に帰ってリラックスしてみると、今なお、違和感が残っていることに簡単に気付いてしまうのです。直感に任せて、噛み合わせのルールに従うこともなく、検査による根拠も無いということは、そのような結果をしばしば招きます。このような方法は、人間ドックや健康診断において心電図や血液検査も実施せず、口頭で「身体の調子はどうですか?」と伺い、皆様が「調子は良い」と答えれば健康診断が終了してしまうの一緒です。そこに「検査による証明」は何も無く、糖尿や心臓病、癌が見逃されたまま寿命が短くなるのと一緒です。保険医療機関、矯正歯科専門医療機関では、悪い噛み合わせは、検査、評価、治療の対象外であるのが事実であり、治療した後もそのまま残っています。40歳以降に歯周病や破折で歯を失う事は、皆様の生活の一部となっています。皆様にとって、インプラントや入れ歯になることは、40歳以降の人生において老化現象と容易に諦めることが可能な事柄かもしれません。周囲を見渡しても40歳以降に歯を失っている人は、いくらでもいるし、自分もその一人になっただけと思うかもしれません。保険医療機関や矯正歯科専門医療機関が、このように検査と治療に時間を要する「噛み合わせ」に力を抜くことによって安価な治療費と、短い治療時間で多くの皆様に夢をお届けすることができているのも事実です。
さて、噛み合わせ検査とは、いったいどのようなものなのでしょうか?当院が考える「理想の噛み合わせ」を皆様に「見える化」できる噛み合わせ検査とは、当院が言うところの「三種の神器を使用した噛み合わせ検査」だけです。三種の神器とは、下記写真で示す①フェイスボー②咬合器③関節の軸で噛み合わせを記録したワックスです。これらにより噛み合わせのルール(Organic Occlusionオーガニック・オクルージョン)に従い、根拠を持って皆様の違和感の原因の歯を発見することができます。悪い噛み合わせは、癌や糖尿病、心臓病などと同様、サイレント・キラーであり、皆様は噛み合わせに違和感を感じないまま、ある日突然、歯を失い、ごく自然にインプラントや入れ歯になっているのです。しかし、三種の神器を用いた噛み合わせ検査は、たとえ皆様に違和感が無くても4つのすべての悪い噛み合わせを見逃しません。
・三種の神器を用いた噛み合わせ検査の模型分析にご興味のある方は、6分のYouTubeをどうぞ!
・三種の神器を用いた噛み合わせの作り方にご興味のある方は、YouTube再生リストをご覧下さい。
(15分×2、18分×1個の再生リスト)
・サイレント・キラー皆様が自覚しにくい4つの悪い噛み合わせにご興味のある方は、18分のYouTubeをどうぞ!
ほとんどの歯科医師が無関心な、噛み合わせの基本:「あご関節の軸で作る噛み合わせ」の重要性。
理想的な噛み合わせとは、あごの関節の軸で、全ての歯が均等に接触する状態です。基準は常に「下あごの関節の軸」なのです。
回転して閉じる物には、軸があります(例、ドア、下あご)。あごの関節の軸とは、ドアで言う開閉の軸です。ドアが正確にドア枠に収まるのは、ドアの軸が回転だけしてドアの開閉に秩序を与えているからです。一方、あごの関節の軸に従えば、下あごの歯は上あごの歯の決まった位置に、ミクロン単位で正確に閉じることができます。逆を言えば、あごの関節の軸に「噛み合わせ」を作ることは、ミクロン単位の正確性が治療に要求されるという事です。そして、あごの関節は、回転して閉じる噛み合わせのスタートポジションとなるべき位置です。下あごの関節の軸が、ドアの軸と異なる所は、その軸である下あごがアイーンと前にも、左右にも動くことで、いわゆるあそびがあります。このあそびは生体特有のものと言え、わずかに高くぶつかる被せ物があっても、一見、それを許容してすべての歯で噛むことができたように見せてしまいます。保険医療機関、矯正歯科専門医療機関では、先述したあように「理想の噛み合わせ」が、「単に、皆様の違和感のある・なし」だけで決まりますので、あごの関の軸を全く考慮していません。噛み合わせは、ただ単に、皆様が自由に違和感がなく、噛みたいところに噛んで決定するのです。しかし、あごの関節の軸を基準に噛み合わせを作る場合、皆様の下あごをその軸に誘導し、ドアの軸のように秩序を与え「違和感の無い噛みたいところで噛む」という無秩序な事はしません。ドアが整然と閉じるための軸の軌道が、1つだけしかないように、凹凸のある上下の奥歯が奇跡のように神合わさるのも、ミクロン単位のズレもないたった1つ軌道なのです。このように「噛み合わせ」は、非常に繊細な技術と専門的な知識を要するもので、時間を省略して、多くの皆様を流れるように治療することができません。装着された詰め物や被せが、あごの関節の軸の閉鎖経路を邪魔した場合、ドアに例えるならドア枠に小さなクギが落ちているのと同じ状態です。ドアはそこから閉じなくなり、クギが落ちているのを無視してドアを閉じようとするなら、軸から離れたクギより軸に近いクギ程、ドアの軸はひどく揺さぶられ、歪みを生じて壊れていきます。これは、人の顎関節症が発症するメカニズムなのです!また、この軸に近いクギ(前歯よりも奥歯が異物になることが問題を引き起こし易いという意味)を放置することは、毎日の開閉によって、クギ自体の変形につながり、人においては、奥歯に暴力的な力が加わることによって、歯ブラシがいくら上手な人でも、経時的に歯周病が進行し、歯が突然割れて歯茎の腫れる原因になるのです。
このような毎日のドアの開閉による奥歯への暴力的な力は、最初、歯の違和感から始まり、虫歯がないのにしみる、痛むということから始まります。しかし、三種の神器を用いた噛み合わせ検査のない保険医療機関や矯正歯科専門医療機関では、あごの関節の軸に配慮して噛み合わせを作っていないため、噛み合わせを診る時は、的外れな皆様が自由に噛む位置を、色紙を用いて診査しているため完全にクギを見逃してしまうのです。また、単に治療中に違和感を感じないところをゴールにしているため、ルールに基づく検査による根拠のある噛み合わせと比較して、まったく的外れなゴールを目指してしまうことがあります(ドアの軸を傾けて、ドアを閉じると、どうなるでしょう?ドアは、閉じなくなりますね!保険医療機関、矯正歯科専門医療機関では、あごの関節の軸を意識していないため、ドアの軸が傾いたところに、色紙を用いて診査したり、噛み合わせを作っているのです!皆様が治療を終える時、単に、違和感さえなければ、どこでも良いという考えなのです)。
また、関節の軸に噛み合わせを作らなければいけない理由があります。それは、この位置が、噛み合わせのスタート・ポジションであるのはもちろんのこと、発音のスタート・ポジションでもあります。あごの関節の軸で、下あごを閉じると、奥歯の2本しか噛んでいない人がいます。このような人は、噛んだ時、前歯が開いてしまっているため、サ行など、歯と舌で接近させて音を構成する際、空気が漏れてしまい、うまくサ行が発音できなくなります。また、さらに重要な事は、あごの関節の軸は、飲み込みや、姿勢の変化などにより下あごに反射が生じると、下あごは本来噛み合わせを作るべき位置である「あごの関節の軸」:ニュートラル・ポジションを取ります。皆様が歯科医院で、単に違和感のない噛みたい位置で詰め物、被せ物装着後、歯科医院から家に帰ってきて、下あごがリラックスしている時や反射が生じニュートラル・ポジションに入った時に、詰め物や被せものがあごの関節の軸の閉鎖経路を邪魔して違和感の原因になるのです!
さらに、「あごの関節の軸」は、全身的なレベルで考えると、人の健康(体幹)に重要な軸で、その軸がずれて、揺さぶられることは、顔の歪みに始まり、姿勢、頭痛、首の痛み、肩凝り、首が回らない、腰痛などに影響することがあります。
神合わせの奇跡を起こすためには、三種の神器を使用して「関節の軸と噛み合わせの調和」を見る噛み合わせ検査が不可欠で、模型分析が非常に重要になります。噛み合わせ治療とは、単に、奥歯の接触を高くしたり、低くしたりすることではありません。治療中、治療終了後の検査が一番重要で、三種の神器を用い、奥歯の接触を通して、あごの関節が揺さぶられない「噛み合わせとあごの関節を調和した状態すること」が本物の噛み合わせ治療なのです。そのため、噛み合わせによって、顎関節症になることは当然のことであり、噛み合わせで顎関節症が治療できることも事実です。噛み合わせにこだわる歯科医院でさえも、治療前は、あごの関節の軸で検査をするのに、治療中、治療終了後には、全く検査は行われず、最終的に、皆様が違和感のない噛みたい位置で噛み合わせを作っている事実があるのです。治療中、治療終了後に三種の神器を用いた噛み合わせ検査がない治療はすべて、最終的な噛み合わせが、単に、皆様の直感によって噛みたいところに決まっているのです!
詰め物、被せ物装着時の落とし穴:ほとんどの歯科医師が作る「皆様が噛みたいところで噛む(無意識で習慣的な)噛み合わせ」。
一般的な歯科医院では、詰め物や被せ物の装着に際し、皆様の感覚に頼った調整が行われています。それは、保険医療機関、矯正歯科専門医療機関に(三種の神器を用いた)「噛み合わせ検査」が無く、これらの医療機関で作る噛み合わせには、噛み合わせのルールや検査による根拠に従うというこだわりが無いからです。そのため、これらの医療機関における理想の噛み合わせとは「皆様が、無意識で習慣的な自由に噛みたいところで噛み、単に直感的に違和感の無い、皆様の個人的な感覚だけが許した噛み合わせ」なのです。
それは、皆様が、歯科医院で、一度は聞いたことのある、「はい、カチカチ噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね。」が、それです。
この方法は、詰め物や被せ物の最終的な噛む位置の決定を「皆様の習慣的な噛み位置」で、皆様の直感に頼っていることを意味しています。もちろん、当院が「あごの関節の軸の嚙み合わせ」を作っても、最終的に皆様に違和感がないかどうかの確認はします。
ほとんどの歯科医師が、被せを装着する場合、習慣的な噛む位置で患者様の感覚に頼り切ってしまいますが、「関節の軸」を意識し、術者が下あごをリラックスさせ関節の軸に誘導して噛ませ、関節の軸、回転中心の閉鎖経路を邪魔する部分の調整をピンポイントに行う必要があると考えています。これがなされない場合、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」という目では確認できない、自覚もしにくい「悪い奥歯の噛み合わせ」が残ります。この「あごの関節の軸」の閉鎖経路を邪魔するぶつかる奥歯を、患者様の任せの噛み合わせで帳尻を合わせようと調整し続けた結果、詰め物や被せ物を削り過ぎてしまい、噛んだ時に、噛むところが失くなって、結果的に噛み合わせが低くなってしまうということがあります。詰め物や被せ物を装着する際に「患者様の習慣的な噛み合わせの位置」と「関節の軸でのかみ合わせの位置」を理解して詰め物や被せ物を調整することは重要です。人の10人に9人は、元々「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」といわれており、本来、すべての人が噛み合わせ治療の対象ともいえます。その結果、40歳以降に歯をあたりまえのように失う人は多く、周囲をみても適当に歯を失っている人はいるため、歯の健康とは、その程度のものと理解し、老化現象と簡単に納得してしまうかもしれません。「関節の位置」でぶつかる奥歯を避けるため、人は「習慣的な位置」で無意識に噛むことができます。そのため、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」=「すべての歯が同時に、同じ強さで接触しない」、この目で確認することができない悪い噛み合わせを持つ人は、2つの噛む位置を持っていることになります。①あごの関節の軸で噛む位置②皆様が無意識に習慣的に噛む位置です。もちろん、これらが、ほぼ一致し、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がない」=「すべての歯が同時に、同じ強さで接触する」という噛む位置が安定している人もいます。時々、噛む位置が2箇所ある、どこでも噛めてしまうというよ不安を抱える人がいるのは、このような理由からです。この2つの噛む位置を持っている人は、一般的に下あごが緊張しています。ニュートラル・ポジションである「あごの関節の軸」で自然に噛めないことが原因となっているのです。一方、「あごの関節の軸」で噛める人は、下あごはリラックスしており、自然に、快適に噛めます。下写真は、三種の神器を用いた噛み合わせ検査で発見された「あご関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯ある」患者様の2つの噛む位置です。上段は「あごの関節の軸の位置」、下段は「無意識な習慣的な位置」です。上段から下段へ嚙み合わせがズレて、すべての歯が接触することができています。その際、関節もズレるため、このことが顎関節症に発展します。この模型の患者様も顎関節症があるのです。
「関節の軸」を意識しない矯正歯科治療によって起こってくること。顎関節症との関連性。
「あご関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」状態は、矯正の仕上がり(矯正治療後の違和感や顎関節症)に影響します。
矯正歯科治療は、全ての歯を移動し、噛み合わせを完全にリセットできる治療法なのです。そのため、治療全体を通して、「あごの関節の軸」を考慮し、三種の神器を使用した検査の実施を行うことで、将来的な歯やあごのトラブルを回避することが可能なのです。また、長く顎関節症でお悩みの方も、「関節と調和した噛み合わせを作る」ことで、原因である噛み合わせから治療が可能です。矯正歯科歯科治療で、顎関節症を治療する場合も、噛み合わせそのものから治療することができますので、矯正治療と顎関節の治療を併用する必要はありません。長く顎関節症でお悩みだった患者様は、対症療法であるマウスピースの使用や、お顔の筋肉のマッサージ、あごの開口訓練、常に上下を歯がぶつからないように真剣に取り組んだり、ボトックス注射、整体に通う、整形外科で注射をしてもらう、リハビリするなどが必要なくなります。このために「関節の軸」を考慮した三種の神器を用いた検査、それから得られる模型分析による評価、「関節の軸」に噛み合わせを作るための噛み合わせの調整(患者様の健康な歯のエナメル質を数ミリからミクロン単位でピンポイントに削る調整技術)が必要になります。精密な噛み合わせを作ることで、「歯の予防」にもなります。先日、私が参加する勉強会で、同僚の先生がお持ちなった患者様のケースに、興味深いケースがありました。60歳の顎関節症の患者様は、40歳から顎関節症に悩んでいました。TCH(tooth contact habit: 歯牙接触癖)があると診断されて、20年間、常に上下の歯がぶつからないように真剣に取り組んでいたそうです。その結果、その患者様は、本来舌先は、上あごの天井の粘膜に(通常スポットと呼んでいます)位置付けるのですが、その患者様は、歯をぶつけないように気を付けるあまり、常に舌を前歯の間に挟んで位置させていたため、開咬という前歯が噛まない噛み合わせになってしまったのです。20年前に噛み合わせ治療を、きちっと受けることができれば、快適な食生活を送ることができたはずです。
最後に
ここまで、熟読ありがとうございます。皆様は、噛み合わせに高い関心をお持ちの方だと推察いたします。たかが「噛み合わせ」と軽視することはないと思います。少しでも違和感があれば、噛み合わせに力をいれた当クリニックにご相談下さい。精密検査と高度な技術で、患者様の「噛み合わせ」を根本から改善し、健康で快適な生活をサポートできると思います。嚙み合わせによる歯の予防は、歯磨きによる予防より確実に価値があります(患者様が、30歳以降で、歯磨きがある程度できる方なら)。しかし、噛み合わせで、歯の予防を予知性を持って行える歯科医師は、ほんの一握りです。当院は、カウンセリングの段階から、違いをお見せすることができると思います!
記事の執筆者:福永 矯正歯科・歯科口腔外科 院長:福永秀一
経歴
1991年 明海大学歯学部卒業
1995年 明海大学歯学部大学院歯学研究科修了:歯学博士の学位取得
1998年 日本歯科麻酔学会認定医取得
1999年 日本口腔外科学会専門医取得
明海大学歯学部口腔外科学第一講座助手
2000年 明海大学歯学部口腔外科学第一講座講師
2002年 羽生総合病院口腔外科部長
2012年 IPSG包括歯科医療研究会VIP会員
2024年 福永 矯正歯科・歯科口腔外科 開設