気になる歯の違和感、見た目ではわからない、身近な悪いかみ合わせ。
ー歯科治療に30年以上携わってきたさいたま市の歯科医師が語る、日本人が歯を失い、歯科医院に治療のために通い続ける理由。
目次
歯に違和感を生じる原因。
ここでは、話を限定して、患者様の歯に、虫歯がない、歯周病が進行していないという前提でお話させて頂きます。
(1)最近、歯科治療をした。(詰め物、被せ、矯正、抜歯)。
この中で、矯正の場合は、ゆっくりかみ合わせが完成しますので、違和感を感じにくいかもしれません。
(2)見た目でわかる、前歯の悪い歯並びがある。
(3)見た目ではわからない、奥歯の悪いかみ合わせがある。
以上3つありますが、違和感を生じるメカニズムは、たった1つなので、それをお話ししていきますね!
患者様の違和感の感じ方。
左右の歯が均等に噛めていない、あるいは、左右どちらかの歯が常にぶつかる気がする。
寝ている時、起きる時、姿勢が変わる瞬間に、歯がぶつかる気がする。
鏡の前に立って、歯を磨く時も、なんとなく、ぶつかっている。食事中も、常に気になる。
また、違和感のある側の関節では、噛む度に違和感が、耳に伝わり気になります。
さらに、違和感のある側のお顔の表情が常に、緊張してこわばり、痺れているようにも感じます。
違和感を理解されない、ありがちなエピソード。
皆様は、こんな経験がないでしょうか?
「歯科医院では、うまく噛めている気がしたけど、家に帰ってくると、左右のかみ合わせが均等ではない気がする」
皆様の良いかみ合わせのイメージは、「左右均等にすべての歯で違和感なく噛める」ということではないでしょうか?
そして、かかりつけの先生のイメージもなんと一緒なのです!そして、歯科医院に行って、かみ合わせの違和感を訴えても、
先生は、「よく見ても、左右均等にすべての歯が当たっているから、大丈夫、問題ありません。」と言うかもしれません。
また、先生がかみ合わせをチェックする際、
「ハイ、カチカチ噛んで、ほら、すべての歯に均等に色が着いているでしょ?だから、大丈夫ですよ。」と、
かみ合わせを調べる色紙の色が付いた歯を鏡で見せられて、異常がないことを知らされ、
自分の症状が、先生に伝わらなかったことに、がっかりしたかもしれません。さらに、複雑なかみ合わせの症状を訴えた結果、
心の問題と片づけられてしまい、最後は精神・神経科を紹介されてしまうようなケースもあります。
違和感の原因を理解するための考え方。
(1)考える際、重要なのは、あごの関節の存在。
多くの人は、かみ合わせを見る時、あごの関節の存在を忘れています。
かみ合わせの出発点は、あごの関節。なぜなら、次項の図のように、左右の関節には、それを結ぶ仮想の軸があります。そして、この軸を回転中心に下あごが閉じて、あごは合わさるため。
(2)回転して閉じる物(例:ドア、下あご)には、軸がある。
下あごの場合、左右の関節の頭を結ぶ仮想の軸があります。
これは、目に見えない軸ですが、姿勢など健康(体幹)にも関わる身体の重要な軸の1つです。
軸があるので、ドアや下あごは、いつも決まった位置に閉じます。
そのため、ドア枠に小さなクギがあったり、詰め物や被せが、ほんのわずかに高いと、
閉じる前に先にぶつかって、ドアは、そこから閉じなくなります。
下あごの関節の軸が、ドアと全く同じなら、上図の状態になります。
しかし、口の中ではそうなりません、なぜでしょう?
それは、次の項目(3)でお話しますね!
「歯の違和感の正体」は、見た目で分からないわずかにぶつかる奥歯(小さなクギ)です。
歯に違和感を感じないようにするためには、軸の閉鎖経路を邪魔せず、
すべての歯が同時に同じ強さで接触する必要があるのです。
ドアは、平坦な面同士が合わさりますが、かみ合わせの場合、奥歯は沢山あり、
それぞれに凹凸があるので、すべての歯が、均等に接触することは、奇跡に近いことかもしれません。
しかし、それを作るのが、歯科医師の本来の仕事です。
(3)ドアの軸と、関節の軸の違い。
ドアの軸は、回転しかしませんが、関節の軸は、アイーンと前にも動くし、左右にも動きます。
そのため、関節の軸は、あそびがあり、詰め物がわずかに高くても、
わずかに関節をズラすことによって容易にそれを許容し、左右均等にすべての歯が、
かみ合わさったように見せてしまいます。(手品ですね!)
そのため、かみ合わさった状態の口の中だけを診査しても、
まさか、関節がズレて、噛み合わさっているとは思えないのです。
(4)原因発見の考え方と、保健治療で噛み合わせを診る限界
すべての歯が噛み合わさった状態では、すでに犯人は隠れおり、事件終了後の現場を見ているのと一緒です。
どの歯が犯人か?確認することができません。できれば、現行犯逮捕したいのです。
すべての歯がかみ合わさって、あごの関節がズレた後ではなく、関節がズレる直前の、
違和感の原因の歯がぶつかった瞬間のスクープ映像を捉えたいです。
そして、原因の歯が他の歯よりも先にぶつかる瞬間のスクープ映像を撮って、
患者様に客観的にお示しすることができれば一番いいのです。
でも、実は、このスクープ映像を撮ることは可能で、当院では、沢山、ホームページに挙げています。
咬合機能検査という術前検査で、「関節の軸」で噛み合わせを検査して判明し、治療前に患者様にお示ししています。
保険治療は、かみ合わせの問題解決が、苦手な分野であり、患者様がかみ合わせに違和感を感じた時でさえ、
原因歯を発見するために行う検査の項目がなんとないのです。保健治療にも噛み合わせの治療項目が普通にありますが、
その実際は、患者様が違和感を感じない感覚に頼った位置に噛み合わせを作っているだけで、
噛み合わせ治療本来の「関節の軸」に噛み合わせを作っておらず、ただ単に違和感ない位置で接触しているだけで、
噛み合わせのルールに従ったものではないのです。そのような理由で、最終的な噛み合わせを決める際、
「ハイ、カチカチ噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね?」と質問しているのです。皆様、ご存知ですね?
保健治療で、1本or2本の虫歯の治療を行う時でも、微妙にかみ合わせは変わります。しかし、治療の開始に先立って、
最新式のレントゲンでCT撮影をすることはあっても、術前に「関節の軸」でかみ合わせの検査をすることはなく、
治療前に噛み合わせの良し悪しを確認はしません。そして、すぐに虫歯を削り始めます。
仮に噛み合わせの検査と称して、患者様が通常習慣的に噛んでいる位置で「ギュッと」ワックスを噛んで検査するだけで、
そこから得られるものは何もないのです。なぜなら、本来の噛み合わせの検査の目的は、「関節の軸」との調和を調べるものだからです。
保健治療では、型取りも歯列全体を取るのではなく、片側だけだったりして、しっかり、省略できそうなところは、省略されているのです。
保健治療は、あたりまえのようにかみ合わせのチェックが緩いため、
見た目でわからない奥歯の悪いかみ合わせの検出には、当然、保険治療のルールでは限界があるのです。
しかし、皆様は、あたりまえの治療が行われていると信じているだけなのです。
(5)親知らず抜歯後、かみ合わせに違和感が残るのはなぜ?
私が、まだ、駆け出しだった頃、親知らずを取った患者様から、
かみ合わせが変わった感じがすると、言われたことがあります。
私は、まだ、卒後数年で、うまく、その質問に回答できませんでした。
しかし、現在、考えていえることは、抜歯した親知らずが、関節の軸で閉じる閉鎖経路を、
最初にぶつかって邪魔をしていた存在だったということです。
ドアで例えるなら、ドアが閉じる途中の小さなクギだったということです。
そのため、閉鎖経路上の小さなクギがなくなって、かみ合わせが変化したと考えられます。
これは、良い方にかみ合わせが変わったといえます。
私は、現在、親知らずの抜歯を行う前に、ケースによっては、
かみ合わせが変わる可能性があることを患者様にお知らせしています。
違和感の次に起こってくる症状(違和感なしに、突然起こってくることもあります)
このように、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」場合、かみ合わせがズレた結果、
下のあご歯と一体になっている下あごの関節もわずかにズレて、無理がかかった状態になります。
関節の回転中心で閉じる下あごは、歯というものが無ければ、下あごがズラされることはないので、
関節の軸もズラされないで済みます。(だからといってずっと歯のない状態も関節には悪影響です。)
さて、違和感の次に、どんな症状が起こってくるのでしょう。
歯の症状:見た目ではわからない、悪いかみ合わせでも、最初にぶつかる奥歯には、
体重の10倍もの暴力的な力がかかっています。
そのため、その歯に虫歯がないのに、歯がしみる、ひどく痛む、歯ブラシを頑張っているのに歯周病が進行する、
歯が突然割れるということが起こってきます。
歯以外の症状:ぶつかる奥歯のために、食事中、下あごの歯が繰り返しズレると、
一体となっている下あごの関節も一緒にズレます。そして、関節や下あごについている筋肉に炎症が生じてきます。
何もしていないのに、痛みが出たり、患部を押すと痛みが出たりします。
また、口を開く時、痛みが出たりします。首の筋肉も下あごに付いているため、同様の痛みを生じ、
肩こりとして現れたり、首が回らなくなってきたりします。
さらに、下あごに付いている筋肉は、頭部にも関連しているため頭痛として症状が出ることもしばしばあります。
さらに、身体の健康に関わる軸の1つである関節の回転軸で自然に噛めないことが、
お顔の表情に影響して、お顔のゆがみ、痺れなどを引き起こします。
お顔のマッサージや、ヒアルロン酸の注射などの対症療法を行う前に、
見た目ではわからない奥歯の悪いかみ合わせがないか、検査することをお勧めします。
一方、関節に対する変化をお伝えします。
関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がある場合、前歯と下あごの関節の間で、
ぶつかる奥歯がてこの支点になり、食事中、噛む度に関節が、シーソーの様に上下に揺さぶられます。
そのようなことを繰り返していると、あごの関節の構造が、壊れてきます。
まずは、下図のように軟骨がズレてきます。
通常、前方にズレます。そうすると、今まで、関節と軟骨は、シンクロして一緒に動いていたものが、
今度は、前方にズレた軟骨を関節が追いかける形になります。そして、追いかけて軟骨に乗った時、
カクッと音が鳴るようになります。この状態が長く続くと、関節が軟骨に乗ることができなくなって、
関節は動くことができなくなります。そして、音が鳴らなくなったと思ったら、口も開かなくなるという状態になります。
また、座布団である軟骨を失った、あごの関節は、コンクリートの上に直に座った様な状態になるので、
関節の表面骨が変形してきます。軟骨のズレは、かみ合わせの悪い、中学生位でもすでに始まってくることがあります。
早めのかみ合わせの治療は、軟骨の位置に良い影響を与えると思います。
一旦、ズレてしまった軟骨は、放置されていた期間が長いと、元の位置には戻らなくなって、
悪いかみ合わせの後遺症として残ります。しかし、かみ合わせの治療を行い「関節の軸」に噛み合わせを作ることで、
自覚症状が少なく、快適に食事が摂れるところまで回復することが多いです。
さらに、かみ合わせの違和感は、姿勢などにも影響してくるため、詳しくは、当院のホームページの矯正歯科が目指す理想のかみ合わせのページの、かみ合わせが悪いことによって起こることの項目をご覧ください。
診査、検査、診断
(1)検査の前の口の中の診査。
当院のコンセプト、Organic Occlusionオーガニック・オクルージョンの4つのルールの内の、
「関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯がある」、「歯ぎしりするとぶつかる奥歯がある」は口の中の診査で判明します。
一方、その他のルール
・「身体の中心から見て歯とあごが左右対称に配置されていない」
・「奥歯の凹凸がルールに従ってしっかりかみ合わさっていない」は、診査では判明せず、模型検査をしなければ判明できません。
今回は、診査、検査で4つのルールの中で最も重要なルールであり、違和感の原因解決の糸口となる
「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」について力を入れて説明します。
この、ぶつかる奥歯があると、かみ合わせがズレます。そのため、題して、
かみ合わせのズレを探し出せ!
「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」の状態は、その奥歯がぶつかった後、下あごの歯は、すべての歯と噛み合うために、嚙み合わせと同時に、関節の両者をズラして対応します。そのため、患者様の下あごを関節の軸で閉じて、下あごの歯がズレることを証明できれば、関節もズレていることを証明できます。そして、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」という見た目でわからない「最小単位」の奥歯の悪い噛み合わせが存在していることになります。
関節の軸で患者様の下あごを閉じて評価するには、
患者様に、「はい、カチカチ噛んで!」と指示をすることはありません。
なぜなら、この時、患者様は無意識にぶつかる歯を避けるため、
下あごの筋肉に緊張が入った習慣的な位置で噛み合わせるからです。
研究では、人の10人に9人は、関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯があるといわれています。
そのため、噛み合わさった時には、関節はすでにズレてしまっているかもしれません。
そのような状態を見ても、犯人の去った犯行現場(ぶつかる歯が隠れた)を見ているだけで、
犯人を現行犯逮捕するためのスクープ映像を撮ることはできません。
できれば、関節がズレる前の、ぶつかる奥歯が接触した瞬間のスクープ映像を撮りたいです。
さて、口の中でぶつかる奥歯が接触する瞬間を捉えることができます。
下あごがズレる直前の状態を再現します。
かみ合わせのズレを探し出すには、まず、下あごの筋肉をリラックスさせるところから始まります。
そして、関節の自然な回転軸を意識して、下あごの歯を上あごの歯に静かに合わせます。
合わさったら、患者様に「ギュッ」と噛んでもらいます。
すると、関節の軸の閉鎖経路上にぶつかる歯がある場合は、下あごの歯がズレます。
この時、かみ合わせを見る色紙を使用して、先ほどのように静かに下あごの歯を上あごの歯に
合わせるという行為を何度か繰り返すと、関節の軸の閉鎖経路上で、他の歯よりも先にぶつかる歯に色がつき、
どの歯が関節の軸をズラす犯人であるかを突き止めることができます。
常に関節の動きをイメージしながら、かみ合わせを診る必要があります。
当院では、このように、検査の前の診査で、原因の歯を特定してしまいます。
検査の時には、もう原因の歯がどの歯であるか判明しています。検査は、診査の結果を擦り合わせるために行います。
一番大事なのは、私だけがわかっているのではなく、患者様にその結果を見える化して客観的にお示ししたいので検査をおこないます。
診査の結果と、検査の結果が、異なる場合は、何度かこれまでの作業をやり直します。
なぜなら、快適に噛める関節の軸で、かみ合わせを作ることが、歯やあごのトラブルを回避し、
ひいては身体の健康(体幹)に重要だからです。
そして、この下あごを誘導した関節の軸、回転中心が、患者様の最終的なかみ合わせを作る上で再現性があり、
その位置へ繰り返し誘導できることを確かめておきます。
当院のホームページのトップの写真は、まさに、私が、あごの関節の軸で、
下あごをリラックスした状態で、下あごの歯を上あごの歯に静かに合わせている瞬間の写真を示しています。
「歯ぎしりすると、ぶつかる奥歯がある」を探せ!
次の診査は、「歯ぎしりすると、ぶつかる奥歯がある」を探せです。このルールは、今回のかみ合わせの違和感とは、直接関連していませんが、悪い噛み合わせの暴力的な力が、歯周病の進行、歯の破折の直接的な原因になる理由です。下写真がその状態です。
このルールは、口元の代表的な悪いかみ合わせ、「前歯が噛まない」「受け口」「八重歯」「出っ歯」に伴うことが多くあります。
なぜなら、口元の前歯の配置が、このルールに関係しているからです。
このぶつかる奥歯は、やはり、「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」同様にシーソーの支点(てこの支点)となって、
歯やあごのトラブルに発展します。
このもう1つの、見た目ではわかりにくい奥歯の悪いかみ合わせの深刻な事は、ぶつかる奥歯が、
「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯ある」の場合は、1本or,2本ですが、
こちらは、3本or,4本にもなる場合があります。そのため、1本を失っても、
ぶつかるメインターゲットが、別の歯に移行していき、ぶつかる歯が無くなるまで、
根こそぎ奥歯を失う場合があるため恐ろしい言えます。写真のケースも4本同時に(上下で8本)
にぶつかっています。
(2)当院のかみ合わせ検査に必要な三種の神器
診査の次はやっと、検査です。当院のかみ合わせ検査に必要な三種の神器をご紹介します。
これらは、患者様の歯の長持ち、あごの健康維持につながるかみ合わせを作る上で、必須のアイテムです。
もし、矯正歯科治療や、顎関節治療、かみ合わせ治療にこの3種の神器が登場しない場合、
快適に噛める身体の健康(体幹)に重要な軸の1つである、関節の軸でかみ合わせを作るつもりがないということを意味します。
また、歯やあごのトラブルは、予防するよりも出てから考えようというスタンスです。
しかし、自覚症状もなく、ある日突然、歯の破折が起これば、最初のトラブルで歯を失ってしまう可能性はあります。
フェイスボー
身体の中心を、咬合器にコピー、トランスファーすることができるので、
その手技をフェイスボー・トランスファーと呼びます。
身体の正中、中心の基準をかみ合わせを見る咬合器にコピーすることで歯やあごを概ね左右対称に配置できます。
関節の軸の閉鎖経路で記録した、かみ合わせのワックス。
先程の診査のやり方と同様の方法でワックスを用いた記録を取ります。
術前検査において関節の軸で、どのように上下の歯が接触するかを知り、
現在のかみ合わせが、「関節の軸」と調和しているかを知るのが、
本来の噛み合わせ検査の目的です。
咬合器
咬合器は、ある意味、ドアの軸と同じ、金属でできているので、生体のように、勝手に関節がズレたりはしません。
そのため、明確に犯人をつきとめ、原因の歯がぶつかる瞬間のスクープを撮らせてくれます。
また、この位置から、患者様が、習慣的にカチカチ噛んでいる位置も教えてくれるので、両方の情報を知ることができます。
最終的なかみ合わせは、この咬合器を使用し、予知性をもってミクロン単位まで調整し精密に作ります。
関節の軸の閉鎖経路を邪魔する歯があれば、その歯がてこの支点になってシーソー現象を引き起こし、
関節をズラして揺さぶり、関節に無理がかかっていることを教えてくれます。
下図は、検査で発見された関節の軸で閉じた位置。奥歯がぶつかった瞬間のスクープ映像。まだ、関節はズレていない。
(患者様が左の歯ばかり当たると自覚する原因は、関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯があるからです!)
下図は、患者様の習慣的にかみ合わさった位置。ぶつかる奥歯を避けるために関節の軸がズレてかみ合わさっています。
関節は、あそびがありズレることもできるので、関節と一緒に噛み合わせもズレて、どの歯がぶつかったかを隠してしまいます。口の中でこのかみ合わさった状態だけを見ていては、まさか、関節がズレて嚙み合わさることができているとは思いもしません。
身体の健康(体幹)に重要な軸の1つである、関節の軸がズレることは、すべての歯とあごのトラブル、
引いては姿勢、頭痛、肩こり、腰痛など全身のトラブルに発展します。
また、かみ合わせの違和感などを生じ、自然に、快適に噛むことができなくなります。
そのため、矯正歯科治療などように、すべての歯を移動し、かみ合わせをダイナミックに変えてしまう治療は、
治療後にかみ合わせの違和感の原因になる「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がない」ように
三種の神器で確認しておく必要不可欠です。
矯正歯科治療では、見た目でよくわかる前歯の悪いかみ合わせは改善されます。
しかし、当院の提唱するオーガニック・オクルージョンの4つのルールは、
どれも見た目ではわからない奥歯の悪い接触を精密に検査、治療する方法です。
もし、矯正歯科治療が、見た目だけで行われた場合、当院のオーガニック・オクルージョンの4つのルール、
見た目ではわからない奥歯の悪いかみ合わせのすべてに該当する可能性があります。
矯正歯科治療後のかみ合わせが、気になるような方は当院にご相談下さい。
当院で行う検査は、患者様の微細なかみ合わせの違和感も見逃さない精密な検査です。
仮に患者様に違和感すらなかったとしても、微妙なかみ合わせの左右差、関節の軸のズレを見逃しません。
保険治療では、もちろん同様の検査はありません。
治療
これまで、お話してきたように、かみ合わせを作る上で、最も重要なことは、
身体の重要な軸の1つである、健康(体幹)に関わる「関節の軸」にかみ合わせを作ることです。
なぜなら、関節は回転中心であり、下あごを閉じるかみ合わせの出発点だからです。
この重要な関節の軸がぶつかる歯によりズレたり、揺さぶられたりせず、
すべての歯があごの関節と調和し、同時に均等にその接触を作ることが重要です。
関節の軸の閉鎖経路上に、ぶつかる奥歯があるとその歯は、前歯と関節の中間でシーソーの支点(てこの支点)となって
体重の10倍もの暴力的な力が、その歯にかかります。
すると、歯には、染みる、痛む、割れる、歯周病の進行などが生じます。
また、その奥歯を支点として、前歯は、もっと噛もうとするため、あごの関節が、シーソーのように引き下げられます。
食事中は、何回も支点となる奥歯が最初にあたって、このシーソー現象を繰り返し、関節を上下に揺さぶります。
そのため、関節や下あごについている筋肉に炎症が始まり、開く時痛い、音が鳴る、口が開かないなどの症状に発展します。
そのため、快適に噛める関節の軸の閉鎖経路上に邪魔するぶつかる歯がなく、すべての歯が同時に均等に噛めることは、
歯の長持ち、あごの健康維持につながります。
当院の治療と、保険治療やほとんどの矯正歯科治療インプラント治療の差は、まさしくこの部分にあります。
なぜなら一般的に、関節の軸、回転中心でかみ合わせが作られることはありません。なぜなら、時間を必要とするからです。
当院の治療がじっくり半日かかるのはそれが理由です。
そのため、多くの治療は、関節の回転中心でかみ合わせを作らないため、治療前、治療中、治療後を通して3種の神器を用いた検査をすることがありません。
また、正しいかみ合わせかどうかの最終的な決定、確認は、当院は、「関節の軸」に下あごを誘導して決定し、
治療後も検査で3種の神器を用い、正しいかみ合わせを作ることができたかを検証します。
一方、ほとんど歯科治療では、患者様の緊張している下あごの習慣的な位置で
「はい、カチカチ噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫ですね?」と噛んでもらって
最終的なかみ合わせの位置の決定、確認を患者様の感覚任せにしています。
その緊張している下あごの習慣的に噛み合わせた位置は、関節がすでにズレて噛んでいる可能性があり、
術後の歯やあごのトラブル発生が生じないという保証はありません。
また、術前に様々な検査を沢山していても、最終的なかみ合わせの決定確認が、患者様の感覚任せであり、
治療後に術前に行った検査を再び行わないのであればやはり保証はありません。
すべては、出たとこ勝負(症状が出たら考えましょう)ということになります。
しかし、自覚症状がなくても、口元がきれいになっても、見た目ではわからない奥歯の悪いかみ合わせのため、
ある日突然、歯が割れて歯を失うことはあるのです。
当院では、術前に行なった検査を、必ず、術後にもすべて行い、治療の仕上がりを精密に評価しています。
そのため、患者様が、ご自身の健康を真剣に考え始めた40歳以降の後半人生50年を、ご自身の歯だけで快適に、
お過ごし頂けるようにサポートできると思います。かみ合わせの暴力的な力をコントロールして、
一生、治療のために歯科に通い続けるという社会問題を解決できるかもしれません。
治療方法①かみ合わせの調整単独:
これは、下あごの関節の軸で閉じるとぶつかる奥歯を中心に、周辺の奥歯も含めて、
歯のエナメル質を数ミリからミクロン単位にピンポイントに削って調整し、すべての歯が、関節の軸で均等に接触するようにする方法です。
そのため、悪いかみ合わせ、詰め物、かぶせの、関節の軸の閉鎖経路を邪魔する部分を削って調整します。
治療方法②矯正歯科治療+かみ合わせの調整:
この方法は、詰め物や、被せなどの治療後ではなく、見た目でわかる口元の悪い歯並びが概ね対象になります。
矯正歯科治療を併用し、概ね整えた後、かみ合わせの調整を併用します。
矯正歯科治療により移動した歯のかみ合わせは、通常、最終的な歯の接触にバラツキを生じます。
そのため、関節の軸ですべての歯が同時に同じ強さで、バランスよく噛めるようにします。
このような方法で行うと、あごの関節をズラす原因のぶつかる歯の修正が行われるため、
顎関節症を伴っている方は、原因のかみ合わせから治療ができます。
矯正治療と顎関節症の治療を並行して行う必要はありません。
当院の顎関節症治療は、矯正歯科治療+かみ合わせの調整の実践そのものが顎関節治療です。
多くの患者様は、矯正治療開始から約半年で、症状が徐々に緩和します。
この治療を行うことにより、あごの関節をズラす、ぶつかる奥歯がなくなるため、その歯にかかっている暴力的な力も働かなくなり、歯の予防もでき、口元も美しくなり、顎関節症も治るので一石三鳥といえます。
また、矯正歯科治療をご希望の方は、口元の美しさと、見た目ではわからない悪いかみあわせで、
奥歯に生じる暴力的な力もコントロールできるため歯の予防にもなりこちらも一石二鳥といえます。
これから、顎関節症治療、矯正歯科治療をご検討の方は、是非、ご一考下さい。
2025/3/17
この記事の執筆者:福永 矯正歯科・歯科口腔外科 院長:福永秀一
経歴
1991年 明海大学歯学部卒業
1995年 明海大学歯学部大学院歯学研究科修了:歯学博士の学位取得
1998年 日本歯科麻酔学会認定医取得
1999年 日本口腔外科学会専門医取得
明海大学歯学部口腔外科学第一講座助手
2000年 明海大学歯学部口腔外科学第一講座講師
2002年 羽生総合病院口腔外科部長
2012年 IPSG包括歯科医療研究会VIP会員
2024年 福永 矯正歯科・歯科口腔外科 開設