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適正な噛み合わせの高さとは?

保険治療と矯正治療に長年携わってきた還暦に近い健康オタクの歯科医師が明かす、誰も知らない噛み合わせの真実!  

皆様は、今、噛み合わせで、悩んでいらっしゃいませんか?歯科の定期健診に欠かさず通い「できる限りのことは、やってきたつもり」とお考えかもしれません。「昔から、甘いものが好きだった。そして、歯磨きを、ものすごく頑張った記憶はない。」「しかし、今は、歯をとても大切に思っているし・・・。」「ほとんどの歯は削られていて、今の噛み合わせの高さが、適正なのかもわからない!」「歯科医院の先生は、100人いれば、100通りの答えをするので、どれが真実なのかわからない!」と悩まれているかもしれません。今回は、当院に通院中の患者様「噛み合わせの高さ」に関する疑問にお答えします。同様の疑問をお持ち方のご参考になれば幸いです。それでは、始めましょう!

ヒトの顔、口の中、歯の形態は、それぞれ個性豊かであり、1つの計測項目ですべてが決まる万能な項目は無い!

まず、歯科医師が、適正な噛み合わせの高さを決める上で無視することができないのは、お顔が美しく見えるかどうかです。噛み合わせの高さを勝手に高くしたり、低くしたりすることは、下顔面(鼻下からオトガイ下)の長さに影響し、ひいては、お顔のプロポーションに影響するからです。特に、歯を全て失ってしまった人を総入れ歯で回復する時、噛み合わせの高さを参考にする基準が残っていません。そのため、すべての歯を失ってしまった人の噛みわせの高さを、一般的に、どう回復しているかをお伝えし、同時にお悩みの患者様への回答も行っていきたいと存じます。お顔全体のプロポーションを見て、噛み合わせの高さを決定することは大事なのです。お顔の美を学問に落とし込む際は、単なる外見的な魅力ではなく、数学的な比率(黄金比)に基づく科学的根拠が必要になります。例えば、かの有名なレオナルドダヴィンチは、上顔面、中顔面、下顔面の比が等しい時、人の顔は最も美しいプロポーションになると考えました。上顔面(生え際から瞳孔線)、中顔面(瞳孔線から口裂)、下顔面(鼻下からオトガイ下)です。

ダビンチによる数学的な比率(黄金比)に基づく同様の方法が、歯科の世界にもあります。ウイリス法と呼ばれる方法は、ダビンチと全く同様の計測点を持つ方法です。1930年に、アメリカの歯科医師、F.M.ウイリスによって提唱されました。さて、すべての人がお顔が美しく見える黄金比のプロポーションで生まれ、成長、発育するわけではありません。黄金比を持つ方もいますが、多くの人が、中顔面と下顔面の長さが一致していない、個性的なお顔をしています。しかし、噛み合わせを1から理想的に変更できる場合は、そこに噛み合わせの高さの理想を位置づけます。一方、持って生まれた患者様オリジナルの基準に合わせるなら、最初から黄金比を参考にはできないということになります。しかし、皆様オリジナル基準にそもそも問題があるため、歯を失ってしまったという見方をすることもできます。皆様の持って生まれたオリジナルの基準に戻すことが最良なのか?という問題もあります。皆様のオリジナルの記録が残っていなければ、理想値を参考にするしかありません。前述してきたことを考慮した場合、奥歯の噛み合わせの高さを厳密に決定することは困難であり、複数の計測項目をチェックしながら適正な高さを最終的に決めることになります。新しい歯が装着されて変化するのは、下顔面ですから、中顔面の長さを基準に噛み合わせの高さを考えます(歯を装着した時、下顔面の長さが、中顔面の長さと一緒になるように歯を作ります)。しかし、中顔面が、より長い人の場合、それに合わせて入れ歯を作ると、顔の面長が悪化し過ぎて見栄えが悪くなってしまうと考えられた場合、他の計測項目も参考にします。ちなみに、当院に通院中の患者様は、すべて歯のある方です。しかし、ほとんどの奥歯は、すでに削って治療されており、ご自身の噛み合わせの高さに不安を感じていました。しかし、ここまでお話してきましたように、人の顔、口の中、歯の形態は、個性豊かであり、これからお話していく各計測項目は万能ではありません。以降にお話しする計測項目も総合的に判断して噛み合わせの高さを決める必要があります。一気に奥歯全体を削る様な場合や、矯正歯科治療などオリジナルの噛む位置が全く無くなってしまう場合は、通常、ウイリス法を含め噛み合わせ高さの参考計測項目を治療開始前に全部記録を取ってから治療を始めます。また、奥歯全体を削るにも、噛み合わせの高さが治療中に変化しないように、歯を削る範囲を少しにして、終わったら次に進むようにする方法もあります。当院通院中の患者様の中顔面は、60.4mmで、下顔面は、64mmでした。この計測値から考察すると、中顔面を参考にした場合、下顔面の方が長いため、噛み合わせの高さは十分高いため、低くする検討もしなければなりません。また、患者様の他の訴えとして、噛む時に耳が詰まっているような感じがあるとのことでした。耳詰まりの自覚症状を最優先にして噛み合わせの高さを決めることは、一般的な治療のやり方ではありません(耳、そのものの問題も考えられるため、耳鼻科での診察も重要です)。しかし、耳の症状も、無視できない症状であるため、患者様の自覚症状を確認しながら治療を進めていきます。

歯科矯正を行う先生は、顔の骨格的観点に立った、適正な噛み合わせの高さを決める別の計測項目を持つ。

前項で解説したウイリス法は、歯科医師が総入れ歯などを作製する際、噛み合わせの高さを1から決める際の参考計測項目です。ここでは、歯科矯正を行う歯科医師だけがに用いる、ウイリス法の様に顔全体から俯瞰的にお顔のプロポーションを分析する別の計測項目を紹介します。これは、セファロ分析と呼ばれる、顔の骨格の角度による分析です。ダビンチの絵画のように、人の横顔のX線を用いた角度分析です。この検査・分析を行うことができると、噛み合わせの高さの分析に正確さが加味されます。次に、セファロ分析に用いる人の横顔のX線写真を示します。

上記の写真を下に、セファロ分析をした結果が以下です。

以下にセファロ分析における多数の分析結果を示します。

この分析結果を下に歯科矯正学的な治療計画を立てます。この項目の中で、噛み合わせの高さと関連するのは、下顔面高(LFH:lower facial heightローワーフェイシャルハイト)です(上図のセファロ分析は、通院中の患者様のものではありません)。当院に通院中の患者様の下顔面高(LFH)は、正常でした。結果として、お顔の美や、お顔の骨格の分析を参考にすると、たとえ耳詰まりの症状があっても、噛み合わせの高さを低いと考える根拠はありませんでした。下顔面高(LFH:lower facial heightローワーフェイシャルハイト)は、当然、面長で噛み合わせが高い人は、高い値を示し、お顔が丸く、噛み合わせが低い人は、低い値を示します。

口の中の計測項目①

ここまで、お顔のプロポーション(黄金比)やお顔の骨格(LFH: lower facial hight)など、お顔全体の観点から噛み合わせの高さを考えてきました。次に、口の中の計測項目で考えていきたいと思います。次の図をご覧下さい。

一般的に、お口の最深部の高さが、通常、38〜40mmといわれており、また、上下の前歯の歯茎から歯茎まで高さが16〜18mmといわれています。当院通院中の患者様は、お口の最深部が、38mmと平均値内であり、上下の前歯の歯茎までの長さも17mmで平均的な長さでした。これらの値は、通常、咬合器に装着した模型上で分析します。

口の中の計測項目②

次に、以下の基準をご覧下さい。

上図の基準があります。上の歯の先端から最深部までの高さは、通常、22~24mm。下の歯の先端から最深部までの高さは、通常、18~20mm。当院通院中の患者様は、①が19.5mmでやや短い状態でした。②は同じく20mmで平均値内でした。

また、上図の基準(上の前歯と下の前歯の重なり度合い:over biteオーバーバイト)は、正常で、2~3mmです。これに照らし合わせて考えると、当院通院中の患者様の値は、1.5mmとやや短い傾向でした。オーバーバイトが浅い方で、噛み合わせが低い方は少ないです。この計測項目も通常、咬合器に装着した模型上で行います。

噛み合わせの高さを、前歯の大きさと、上下の前歯の重なり具合から考える!

一般的な天然歯の上あご前歯の大きさは、長さ10~11mm、幅は約8mmになります。通院中の患者様の上あごの前歯には、仮の歯が装着されており、歯の長径は11mmで、幅径は8mmで、一般的な大きさでした。また、下図に示す理想のスマイルラインも参考にします。スマイルした時の前歯6本の見え方と上下唇の位置関係です。上あごの前歯の先端が下唇のラインに乗っかると笑顔が素敵に見えます。通院中の患者様のスマイルラインは、良好な状態でした。

一方、上下前歯の重なり(over biteオーバーバイト)は、前項において正常2~3mmであるところ、患者様は、1.5mmでした。重なりが深い方が、皆様が自覚できない4つの悪い噛み合わせの1つ「歯ぎしりした時、奥歯がぶつかる」が起こりにくくなります。これを、専門用語でアンテリアガイダンスといいます。上下の前歯の重なり具合が深い方が、アンテリアガイダンスが発揮しやすくなります。
以下は、上下の前歯の深さが重要な役割を果たす、下あごが前方に歯ぎしりした時、奥歯がぶつからない状態を示した写真です(当院、噛み合わせ矯正歯科治療後:現在、治療中の患者様のものではありません。)。当院噛み合わせ矯正歯科治療で、アンテリアガイダンスを構築した状態です。

現状で、患者様の前歯の上下の重なり具合を正常値に近づけるためには、前歯を長くするか、奥歯の噛み合わせを低くしなければなりません。
一方、噛み合わせが低い人の噛み合わせの特徴として、噛んだ時に下の前歯がほとんど見えないという、深い噛み合わせの人がいます。このような人を、過蓋咬合(かがいこうごう)と呼びます。以下の2つがそのようなケースのの写真です(2つは、別々のケースです)。このような方のLFH(lower facial heightローワーフェイシャルハイト)は、小さいです。上下の前歯の重なり具合(over biteオーバーバイト)が、深いため、皆様が自覚できない4つの悪い噛み合わせの1つ「歯ぎしりした時、ぶつかる奥歯がある」が生じにくくなります(アンテリアガイダンスが発揮しやすい)。しかし、歯ぎしりする時、重なりが深いため、上下の前歯の滑走する距離が長くなるため前歯に負担が生じやすく、上の前歯が将来的に力の負担で歯周病になりやすい弱点があります。また、下の前歯は、周囲を覆われているため、下あごが運動しにくくなりますし、あごの関節にも障害が出やすくなります。

適正な噛み合わせの高さと、審美的な前歯の見え方を共存させるために。

スマイルしないで安静にしている時や、お口を軽く開けた時、上あごの前歯が上唇から露出している量は、男性で2~3mm、女性で3~4mm位です。上唇から上あご前歯が見えている方が、若々しく見え、女性の方が、露出している量が多い様です。一方、前歯が全く見えない事は、歯が無いことを連想させ老けてみえてしまいます。下写真は、上段は、上唇から歯の露出がある(男性)の状態、下段は、歯の露出が無い(男性)の状態です。これらの状態は、上あごの前歯の大きさを決める際の参考になります。

現在、治療中の患者様の、安静時の上あご前歯の口唇からの露出量は、3.5mmで平均的な露出量でした。この露出量から考えると、前述した上下の前歯の重なりは、1.5mmと少なく、仮歯の前歯の大きさは平均的な大きさであることから、奥歯の噛み合わせが、もう少し低くなければ、前々項で述べた平均的な上下前歯の重なりの量(2~3mm)に達することはできません。この点から考えると現在の噛み合わせの高さは、決して低くないと考えられます。一方で、下の前歯の下唇から露出は、一般的に無くても良い状態です。下の前歯の高さは、下唇とほぼ、同じ位の高さで良いのです。