歯周病、顎関節症に悩まない!あごの関節ファーストに噛み合わせを作る重要性!
歯科治療に30年以上携わってきた、さいたま市の歯科医師が明かす、日本人が歯を失い、一生、治療のために歯科医院に通い続けている理由。
目次
はじめに:現代の歯科医療の問題点
現代の人々は、忙しく日々の生活に追われています。その中で、食べ物やファッションなど、いわゆる、早い、安い、簡単のファストビジネスが盛んに行われ、需要も高まっています。このようなファストビジネスの中で、多くの人が、「未来の私」を夢見ることができていることは確かです。しかし、一方、美容医療と共に、歯科医療も(特に矯正歯科治療)、まるで医療がファッションであるかのように安易な治療や、見た目重視に偏り、医療の本来の役割である「長持ち」「健康維持」が軽視されています。歯科医院の数もコンビニの数より多いと言われ、多くの歯科医院が、しのぎを削りビジネスとして成功するために「早い、安い、簡単」を謳い文句に、簡単に飛びつく人を獲得しようと必死です。このような状況の中で、歯の長持ち、あごの健康維持に直接関わる「噛み合わせ」の学問は、今や過去の遺物となっています。なぜなら「噛み合わせ」を正確に作るには、検査による根拠に従い、その実践には時間を要するからです。他の分野と同様、歯科にもデジタル技術やAIの活用の波が押し寄せ、一見、時短、簡単に結果を出せる様になっています。しかし、多分にアナログの技術を必要とする「噛み合わせ」の検査、評価、治療は、現代の歯科治療とは、無縁の状態となっており、時間のかかる「噛み合わせ」は、ファッショナブルに時短で儲けるビジネスの足手まといとなるため、それを実践する人が皆無となっています。そして「良い噛み合わせ:あごの関節ファーストの「噛み合わせ」を作ることの重要性は、「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」のない保険医療機関、矯正歯科専門医療機関を治療の窓口とする皆様には伝わらず、10代から顎関節症に悩み始め、40歳以降に歯を失うことも老化現象として簡単に受け止められるようになっています。
噛み合わせの基本:あごの関節ファーストとは
関節の軸は、左右の関節を結ぶ仮想の軸です。この下あごの関節の軸は、ドアでいう軸であり回転中心、ドアや噛み合わせに秩序を与えているものです。そのため、下あごは、本来、関節を回転中心として噛む必要があります。秩序を乱して、回転軸の閉鎖経路外にズレて着地することは許されないのです!しかし、あごの関節と家のドアの大きな違いは、あごの関節は、志村けんのようにアイーンと前にも、左右にもズレることができることです。このため、人は、少々、わずかに高い奥歯があっても、わずかにあごの関節を「前や横」にズラして、すべての歯が違和感なく噛める位置で噛むことをしてしまいます。このことが、顎関節症、歯周病、歯の破折などを引き起こしていくのです。正しいかみ合わせでは、軸である回転中心の関節は、噛み合わさった時、「前や横」にズレたりしません。ドアの軸のように、ドアがドア枠へ静かに、整然と閉じるように、奥歯の凹凸同士を精密に誘導し、神合わせの奇跡が起こるのです。この奇跡を作る仕事が「噛み合わせ治療」であり、当院の役目です。すべての歯を移動する矯正歯科治療においては、針金やゴムの矯正力による歯の移動だけで、この奇跡を起こすことは不可能です。数ミリからミクロン単位に渡る歯の精密な調整というものが、治療を通して必要になるのです。また、あごの関節の軸は、身体の健康(体幹)にも重要な軸で、関節の軸が「前や横」にズレることは、姿勢、肩こり、頭痛、腰痛、首の痛み、首が回らない、お顔のゆがみなどに影響します。
あごの関節ファーストの「噛み合わせ」を作る必要性。
あごの関節ファーストの「噛み合わせ」を作ることは、ドアが平坦なドア枠に整然と収まることと一緒です。一方、下あごに生えている奥歯の凹凸が、上あごの奥歯の凹凸に、ぶつかることなく収まることは、歯とあごの健康にとって重要です。もし、下図のようにぶつかる奥歯があれば、下あごの歯が「前や横」ズレ、同じ下あごにある関節も一緒に「前や横」にズレます。すると、ぶつかった瞬間の奥歯には体重の10倍もの暴力的な力が働き、違和感に始まり、虫歯がないのに歯がしみる痛む、歯ブラシを頑張っているのに歯周病が進行する、歯が突然割れるなどが起こってきます。一方、あご関節は、噛む度に「前や横」にズレるのですが、食事中は、それが連続して繰り返されるので、ぶつかる奥歯がてこの支点(シーソーの支点)となり、前歯はもっと噛もうと繰り返するため、てこ現象(シーソー現象)が生じ、あごの関節は上下に揺さぶられます。すると、関節や下あごに付着している筋肉に炎症が生じ、徐々に顎関節症(口が開かない、開くとき痛い、音が鳴る)に発展していきます。
研究によると、人の10人に9人は、元々、関節ファーストで「噛み合わせ」が作られておらず、自覚しにくい4つの悪い奥歯のかみ合わせが組み合わさって存在しているといわれています。そのため、私達の多くは40歳以降に、ついに、噛み合わせの力のストレスに耐え切れなくなり、歯周病の進行、歯の破折として現れ、最終的に歯を失います。また、このような悪い噛み合わせが原因で30代、40代で早くも総入れ歯になってしまう人もいます。そして、歯磨きや定期検診を真面目に行っている方でも、歯を失ってしまうのはそのためです。現代の歯科治療の理想の「噛み合わせ」は、「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」が無いため、皆様の個人的な感覚で違和感の無いことが、「理想の噛み合わせ」となってしまています。皆様から積極的な訴えが無ければ、「理想の噛み合わせ」は続いていると考えているため、定期検診においても「噛み合わせ」については、完全に配慮がなく、無関心な状態です。日頃から「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」が無いと言うことは、「噛み合わせの良し悪し」が分からない状態であるため、何が「悪い噛み合わせ」であるかということも全く関心がなく、治療後も、そのまま「悪い噛み合わせ」が、残ったままになっています。そして、現代の歯の予防も「悪い噛み合わせ」とは無縁の歯磨きの観点にしか立っていません。定期検診で行われている内容は、どれも私達が、どれだけ歯磨きを真面目にやっていたかの評価と対応です。たとえ、歯周病が噛み合わせが原因で進行していたとしても、「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」が無いため、噛み合わせの治療が行われるチャンスはなく、皆様の歯が失われる理由は、すべて皆様の歯磨きの努力が足りないせいになっているのです。そして、嚙み合わせの治療を行っていれば、抜かずに済んだ歯の助かるチャンスも摘み取っています。噛み合わせの評価、治療は、歯科医師にしか行うことができないプロフェッショナルケアですが、そもそも「噛み合わせとはどういうものか?」を知らない皆様は、何度歯を失っても全く疑問にも感じない世界にいるのです。そして、歯を失った後、インプラントや良質な入れ歯を求めて彷徨うことになっています。現代の歯科治療は、「噛み合わせ」とは無縁の状態です。当院の定期健診は、常に、噛み合わせの観点から診査、評価を行っています。
皆様が自覚できない悪い噛み合わせ。歯やあごにトラブルを生じるメカニズム。
あごの関節ファーストでない下図の「悪い噛み合わせ:すべての歯が同時に、同じ強さで接触していない」の状態は、噛み合わせの違和感を生じることがある、皆様が自覚しにくい重要な「悪い噛み合わせ」です。このような些細な悪い噛み合わせが、顎関節症や歯の喪失を引き起こしていることを皆様はお気付きでないと思います。この状態を放置すると、そのぶつかる奥歯やあごの関節に負担がかかり様々な歯とあごのトラブルに発展します。この歯やあごにトラブルを生じる、メカニズムの動画を供覧いたします。(1分と6分)
もし、ご興味のある方は、以下のYouTubeもチェックしてみて下さい。(約18分)
患者様の違和感のある・なしで、最終的な噛み合わせを決定する危険!
多くの歯科医は、患者様の違和感のある・なしで、最終的な噛み合わせを決定しています。
どのように決定しているかというと、「はい、カチカチ噛んで」「高いですか?高くないですか?大丈夫
ですね。」と質問しているのです。これは、患者様の個人的な感覚に完全に頼った状態であり、歯の長持ち、あごの健康維持に何の根拠もありません。「関節ファースト」に噛み合わせを作る代わりにこの質問をして、患者様が、噛み合わせの最終的な位置と治療の成果に同意したことを得ています。これは、自覚症状がなく、見た目で問題がないように見えても、「あごの関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯があり」、関節の軸をズラしたり、揺さぶっている可能性があるため、将来的な歯とあごのトラブルの原因になる可能性があります。違和感がない、口元の歯並びが美しいということは、どちらも、主観的な判断で、検査結果による客観性が無いのです。
人の10人に9人は、永久歯が完成した15歳位で、この「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」といわれています。そのため、患者様のこの習慣的な噛み位置を信じて歯科治療を進めた場合、暴力的な噛み合わせの力の積み重ねにより、10代から顎関節症の発生、40歳を過ぎて歯周病の進行や、歯の破折により突然、歯を失ってしまう可能性があります。ほとんどの歯科治療は、嚙み合わせが原因の歯周病の進行に恐ろしく無頓着であり、その対応が皆無です。歯磨きによる歯の予防が、皆保険制度によってこれだけ普及した現代においても、未だ、私たちの多くは、当たり前のように歯を失い、インプラントや良質の入れ歯を求めて彷徨っています。患者様が、過去に歯やあごのトラブルを経験していたり、長く治らない顎関節症を患っていたり、口元の歯並びをきれいにしたいというきっかけがあれば、現在の患者様の噛み合わせをリセットして、関節ファーストの噛み合わせを作るチャンスはあります。
皆様の習慣的に噛む位置に問題がある場合、下あごは、常に緊張していてリラックスできません。
一方、関節の軸と調和している噛み合わせの場合、下あごは、リラックスしていて、自然に、快適に、違和感なく噛めます。
保健治療、インプラント治療、歯科矯正治療の問題点
皆様の歯が、ほとんど残っている場合の各治療の問題点についてお話します。保健治療は、少数歯の虫歯治療が中心の場合、関節ファーストで嚙み合わせを作ることはできません。なぜなら、小数歯の治療では、関節の軸に影響を与えることができないためです。そのため、皆様の嚙み合わせの良し悪しに関わらず、その他の治療しない多くの歯の嚙み合わせを、邪魔しないように詰め物、被せ物を作らなければならないからです。この場合、治療する歯を、本来の関節の軸に調和させるというよりも、治療しないその他大勢の歯の噛み合わせに調和させなければならいからです。そのため、患者様のこれまで同様の習慣的な噛む位置に最終的な噛み合わせを決定する必要があります。元々嚙み合わせが良ければ、それを悪化させないように、被せを装着しなければなりません。元々噛み合わせが悪ければ、その悪い噛み合わせがさらに悪化しないように、被せを装着しなければなりません。しかし、関節の軸ではない、習慣的な位置に噛んでいる人(噛んだ時に、あごの関節が「前や横」にズレる噛み合わせの人)でも、被せの装着後、不意に関節の軸で噛める瞬間があります。それは、唾を飲み込んだ瞬間や寝た瞬間などの姿勢の変わる時に、下あごが反射によってニュートラルポジションをとることがあります。このようなことから、「歯科医院で調整したもらった時は、うまく噛めていたのに、家に帰ってきたら被せが高い気がする」という現象が起こるのです。いずれにしても、保険治療で関節の軸に噛み合わせをリセットできるのは、左右の奥歯を多数歯に渡って、同時に治療したり、総入れ歯のようなほとんど歯がない人の治療だけです。また、保険医療機関で行われるインプラント治療も、少数歯の場合は保健治療のやり方で嚙み合わせが作られています。一方、All on 4などは、完全に噛み合わせをリセットできる手技なので、関節の軸と調和したインプラントを装着することは可能です。さて、とりわけ、矯正歯科治療においては、患者様の健康なすべての歯を移動しているので噛み合わせを完全にリセットすることができます。そのため、自由に関節の軸と調和した理想の噛み合わせを与えることが可能です。それにも拘わらず「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」が無いことで、最終的な噛み合わせの位置決定が、患者様の個人的な感覚任せになってしまうのは、大きな損失といえます。矯正歯科治療後の患者様の嚙み合わせが、関節の軸に調和していない嚙み合わせであれば、違和感に始まり、その後の歯やあごのトラブルに発展していく可能性があります。一生に一度の矯正歯科治療が、見た目重視で口元の見え方や、歯並びに特化して、噛み合わせがおざなりになった場合、大きな損失といえます。多くの矯正歯科治療機関があり、マウスピース矯正なども様々な意味合いで手軽にできるとコマーシャルが行われています。しかし、治療費に見合った対価であることは間違いないので、熟慮した上で治療を受ける医療機関を決定することをお勧めします。
関節ファースト作る噛み合わせ調整の重要性と現状。
噛み合わせの調整は「すべての歯が同時に、同じ強さで接触していない=関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」という皆様が自覚しにくい悪い奥歯の嚙み合わせを治療することです。このぶつかる奥歯わずかに高い量は、数ミリからミクロン単位です。このわずかな量で、顎関節症になったり、歯を失ったりしています。そして、この状態は「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」によって唯一発見することができます。保険医療機関や矯正歯科専門医療機関のような「噛み合わせ検査」の無い医療機関では、この悪い噛み合わせは、検査、評価、治療の対象外です。「噛み合わせ検査(三種の神器を用いた)」は、関節の軸に噛み合わせが調和するために、どの程度の歯の量を調整する必要があるかを予知性を持って調べることができます。噛み合わせの調整は、患者様の健康な歯のエナメル質を数ミリからミクロン単位でピンポイントに削る調整法です。これによって関節の軸に調和してすべての歯が同時に、同じ強さで接触することができるので、将来的な歯やあごのトラブルを予防できます。一般的に、矯正歯科治療のよる歯の移動後は、全体的な歯の接触にムラがあり「関節の軸で閉じると、ぶつかる奥歯がある」状態です。この正確な噛み合わせの調整を行える歯科医師はわずかであり、時間もかかるため、多くの歯科医師は敬遠しています。また、患者様の習慣的に噛む位置で、自己流に噛み合わせの調整を行う歯科医師も存在します。そのため、日本顎関節学会では、顎関節症の治療に対して安易な噛み合わせの調整を行うことを推奨していません。そして、顎関節症の治療に対しても、対症療法だけを行うことを推奨しています。しかし、長く顎関節症を患い、苦しんでいる患者様はいます。関節の軸で嚙み合わせを作ることは、顎関節症を原因である嚙み合わせから治療できる本幹なのです。長く顎関節症を患っている方にとっては、暗いトンネルの中で治るかどうかわからない、マウスピースを長く使用していたり、お顔のマッサージやお口の開口訓練、上下の歯を接触させないように真剣に取り組んだり、ボトックス注射をしたり、あるいは、もはや歯科を諦めて整体にいくなどになっています。ほとんどの歯科医師は「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」による根拠もない状態で健康な歯を調整することへの抵抗感や、十分な知識と技術のない状態で歯を調整し、患者様に顎関節症を引き起こしてしまう恐怖から、「健康な歯も調整しないで、時間もかからずに治療できる」という大きなたてまえで、関節の軸と調和した精密な噛み合わせを構築することを放棄しています。
本来あるべき歯科医療:予防と長期的な健康
本来の歯科治療の姿は「歯の長持ち」「あごの健康維持」の観点に立ったものでなければなりません。そのため「すべての歯が同時に、同じ強さで接触する」噛み合わせを作らなければなりません。そして、あごの関節の軸と調和して噛み合わさった時、ぶつかる奥歯がなく、あごの関節の軸が「前や横」にズレたり、揺さぶられない噛み合わせを作ることです。そして、歯の予防は、噛み合わせによるプロフェッショナルケアで暴力的な噛む力の適切なコントロールと、歯磨きによるホームケアで細菌のプラークコントロールをセットで行い、歯の長持ちとあごの健康維持を目指すべきです。
歯科医院選びのポイント
関節の軸と調和した噛み合わせの構築の重要性を理解し、治療を通して、術前、術中、術後に渡って適切に「噛み合わせ検査(三種の神器を使用した)」を実施して「噛み合わせの良し悪し」を評価し、治療を行ってくれる歯科医院を選ぶことが重要です。三種の神器であるフェイスボー、関節の軸で噛み合わせの記録したワックス、咬合器などを使用し、見えないあごの関節の状態を「見える化」して、原因の奥歯を発見することは重要です。じっくり時間をかけて丁寧に治療を行ってくれる歯科医院を選びましょう。また、治療が終了した後も、再度、あご関節の軸と調和した噛み合わせが構築できたかを検査で検証する、自身の治療を過信していない先生を選びましょう。口元の前歯の美しい歯並びと、単に噛んだ時に違和感のない噛み合わせが、理想の噛み合わせではないのです。
まとめ
関節ファーストの正しい噛み合わせは、健康な歯とあごを維持するための重要な要素です。
安易な治療や、見た目重視ではなく、長期的な健康を見据えた歯科治療や矯正歯科治療を選びましょう。
最後まで、この記事をご覧頂きありがとうございます。
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この記事の執筆者:福永 矯正歯科・歯科口腔外科 院長:福永秀一
経歴:
1991年 | 明海大学歯学部卒業 |
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1995年 | 明海大学歯学部大学院歯学研究科修了:歯学博士の学位取得 |
1998年 | 日本歯科麻酔学会認定医取得 |
1999年 | 日本口腔外科学会専門医取得 明海大学歯学部口腔外科学第一講座助手 |
2000年 | 明海大学歯学部口腔外科学第一講座講師 |
2002年 | 羽生総合病院口腔外科部長 |
2012年 | IPSG包括歯科医療研究会VIP会員 |
2024年 | 福永 矯正歯科・歯科口腔外科 開設 |